WORKS事例紹介

ふわふわのおうち

計画中

着ぐるみ制作とイベント会社をされている、Kさん。
地域の子供たちのために開かれた家を建てたいとの素敵な計画。
過去に本社と別荘を民家で設計施工させて頂き、今回で3回目のご依頼!!

 


本社の社屋内観

 


別荘外観

いずれも木の香りいっぱいの民家の家作りを気に入って頂けたようで、なんとも嬉しい限り。
信頼と素敵な志に精一杯応えなければ!と気合が入ります!

 


早速敷地調査を開始。
旧街道と川沿い沿った広々三角形の敷地、敷地の真ん中にはソメイヨシノの大木。
「この桜は残したいね。」とKさん。同感です。

さっそく樹木医さんに相談をし、木の状態をチェックしてもらう。
ちょっと痛みはあるけれど、適切に処理すればまだ大丈夫との事、一安心。
敷地には高低差があり、大きな桜の木を残した施工と予算の調整が必要ですね。

 


ここで求められたご要望をまとめるとこんな感じ。
・子供が集える大きな空間
・川沿いの防災(過去に増水したことがあるそう)
・広い駐車場とお庭

 

という訳で、駐車場と広さを確保して、
大きな建物なので価格を抑えるために金属の外壁材で屋根と壁を覆っちゃおう。
倉庫っぽくなると楽しくないので、親しみやすい家型の形がいいかなー。
用途の違う部分を分けて~、間はパーゴラで気持ち良い空間を作ってー。
桜に対して大きく開口を設けてー。

 


完成したファーストプラン。
シンプルな家型の建物が二つ、桜と景観に合わせてちょっと斜めに。

 


吹き抜けとお庭との中間領域を沢山設けて、遊びのあるプランです。
ちょっと攻めたプランだけどどうかなぁ~。

「面白いデザインやけど、もう少し床面積が欲しいなぁ~。」
「お庭も広くとりたいなぁ~。」
「建物は用途が違っても一つで大丈夫。」

なるほどなるほど。

 


では、もっと敷地を効率的に使えるように建物を配置する必要がありますね。
ボリュームの違う空間を一つの屋根に納まるようまとめて。
お庭に対してもアクセスしやすく。
もちろん価格も抑えられるように。
桜の木と敷地に合わせて配置して、構造も丈夫になるように。

 


検討に検討を重ね・・・

 


完成しました2ndプラン!
川の反対側から眺めると大きな一つの屋根に見える緩やかな屋根。
桜を囲うように配置したL字型の建物になりました。

 


木部の意匠もふんだんに使って温かいイメージに。
二階のベランダからの眺めは、桜と川と遠くに見える里山の借景が綺麗ですよー。

 


お部屋のイメージは、今回CGで作りました。
2階は力強い梁とモダンな納まり。

 


一階は広々とした空間で子供たちも自由に走り回れます。
軒先を伸ばしてウッドデッキと一体になった空間ができればいいな。

 

良い家が出来そうですね。ということで実施設計がスタート。

今回の建物は大空間を作り出すためにちょっと難しい構造になっています。
また、集成材を使えば簡単ですが、無垢材でどこまで作れるかチャレンジの意味も込められていました。

さすがに一人で設計するには、時間も労力も足りないので、構造設計事務所※に協力をして頂くことになりました。
※建物の構造を専門に設計する事務所

 


設計作業はとっても地味で孤独な作業になるのですが、
今回は構造設計の相棒もおり(学生時代の友人でもあるので)、設計に熱が入る入る。

柱の継ぎ方、納め方を大量の資料をやり取りしながら進めます。
気づけば完成した設計図は200枚を超えていました。

 

さ、準備は万全!
いよいよ施工がはじまります。

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建設中


廻りにあった建物が解体されて、広い敷地に桜の木が一本。
現場の工事に耐えられるように、まずは樹木医さんに丁寧に傷跡を手当してもらいます。

現場で着工準備を進めていると、地域の方が
「この桜の木は残るの?毎年桜が咲くのを楽しみにしているの。」と声をかけてくれました。

もちろん残りますとも。

 


まずは、地鎮祭。
当日はどしゃ降りの雨でしたが、
神主さん曰く「地面がよう固まってよろしい。」との事。
晴れたら晴れたで、それは良い日になるのでしょうね。
地鎮祭に悪い日はないようで安心しました笑。

 


地鎮祭が終わると、基礎工事のスタートです。

毎回、本当に綺麗な鉄筋を編んでくれる熟練の鉄筋屋さん。
見えない所だからこそ、丁寧に仕事をしてくれる職人さんは大切ですね。

 


高低差の解消と増水対策として、敷地の奥は高基礎になっています。
高低差のある基礎、土間納まり、地中梁、特殊な柱の接続方法等、難易度の高い基礎形状に正確に応えてくれました。
現場管理の精度を求められる重要な場面に、幾度となく現場に足を運びました。

 


基礎が完成すると次は棟上げですが、現場では先行足場が組まれていました。
本来は建物の外周部だけに設置される足場ですが、今回は内部空間が大きいため部屋内にも足場が組まれます。写真の足場が建物の中にすっぽり入る内足場だから驚きです。

 


ついに棟上げ。
住宅3軒分ほどの構造材が運び込まれてきました。
棟上げは3日間かけて、慎重に進みます。
一番大きな材は、幅30cm長さ9mを超える大梁。
威勢の良いカケヤの音と、木の香りが気持ちがいいです。

 


上棟式では、コミセン打ちを体験して頂きました。
柱と土台をつなぐ大切な部材です。
お父さんに手伝ってもらいながら小さなカケヤで打ち込みます。
上棟式でしかできない、貴重な体験。

 


棟が上がると、屋根をかけて、壁を作って行きます。
建築中に雨が入って中の材を濡らさないように、建物をブルーシートですっぽり覆います。
大きな建物なので、養生作業だけでも大変な仕事です。
夏場の工事は台風が来ない事を祈るばかり。

 


沢山の人に囲まれて、責められている訳ではありません笑。
順調に工事も進み、構造見学会を開催させて頂きました。
土台について熱く語っております。

 

これから家作りを考えている方にはとても参考になりますし、
機会があれば是非参加して頂きたいイベントです。
民家の家作りのこだわりは、構造や基礎、金物など、
完成すると見えなくなってしまう所ばかりなので、
「構造見学会」はおすすめです。

 


外周部の壁下地が完成すると断熱工事が始まりました。
今回は吹付断熱の「アイシネン」を採用。
発泡性の断熱材が隙間なく壁を埋めて、高い断熱性能を発揮します。
吹き付けた瞬間に膨らむので、膨らみすぎた部分をカットしています。

 


完成するとこの通り、隙間なく綺麗に断熱材が入りました。

 


大工さんが内装の下地を作っています。

 


外壁はほぼ完成。
今回はSOLIDOと言う外壁材を採用しました。
コンクリート調の自然な風合いで、リサイクル材を使った環境性能の高い壁材です。
木部の風合いとのコントラストがいい感じ。
足場が外れるのが待ち遠しいです。

 

屋内では住宅設備機器の取り付けが始まりました。

お風呂やエレベーターなど大きな設備が順序良く組みあがっていきます。

 

本来キッチンも住宅設備機器として現場で組み上げるのですが、今回は大工さんによる手作り造作キッチンです。

既製品にはない温かみとこだわりの詰まったキッチンになりそう。

壁には淡いグリーンのタイルが貼られていますね。

 

足場の外れた外部では、大工さんがウッドデッキを作っています。

材料はヒノキ。雨が流れるように勾配をとった土間に対して、デッキの床は水平になるよう丁寧に高さを調節して作って行きます。

真夏に棟上げをしてから季節はもう冬。

完成は目前です。

 

最後に現場に運び込まれたのは、なにやら大きな鉄骨。

手摺が取り付けられて、コンクリートに固定されました。

一体何になるのか?答えは完成ページで!

 

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完成

地域の子供たちのために開放できる住宅として、立案から一年ついに完成しました。

桜の大木を囲うように配置されたK様邸。

桜が満開になればきっと素晴らしい景色になる事間違いなし!

アプローチには、鉄骨の橋がかかっていて、桜の木をくぐる様に玄関へ進みます。

駐車場から橋を越えて、桜をくぐって、ホッと気持ちも切り替わる気持ちのいいアプローチです。

 

橋を作ったのは、桜の木を守るため。

根っこの上をコンクリートで覆わないように、橋で空間を設けてあります。

 

木製の引き戸の玄関は、左右にガラスが入っていて、やってくる子供たちの姿も良く見えます。

庇と部屋内の下がり天井の高さを合わせることで、内と外が繋がったような伸びやかな空間になっています。

 

玄関を入ると大きな広場が。

 

南面いっぱいの開口で明るく開放的!

ただ広いだけの体育館のような空間にならないように、天井の仕上げを変えたり、

奥の吹き抜けや下がり天井を設けて、リズムのある空間を目指しました。

 

可動間仕切りを使って2部屋にもできちゃう。

建具の素材を部屋の仕上げと合わせてあるので、格納していても目立たないのがGOOD

 

ゆるやかな木製の階段は、黒のアイアンでアクセントを。

 

手に触れる部分は木で覆って、シンプルで可愛らしいデザインに。

 

1階手洗い場には、海をイメージしたタイルが貼られています。

所々に海の生き物が埋め込まれていて子供に大人気間違いなし!

 

鮮やかなグリーンのアクセントクロスが張られたトイレ。

床はコルクタイルで、色合いも素敵。

 

階段を上がると、勾配天井と太鼓梁の素敵なリビング。

窓からは桜の木と里山が窓いっぱいに広がる最高のロケーションです。

 

リビングの反対側には吹き抜けに通じる小窓が。

 

手作りの枝でちょっとした遊び心を。

枝ごとに扉の開口を変えられる優れものです。

 

寝室にも吹き抜けに通じる障子窓が。

遠くの里山と桜が眺められます。

登り梁を天井のアクセントに、左上にはお施主さんのご自宅にあったステンドグラスを配置して、程よくリビングと繋がります。

 

手作りの造作キッチンは、ステンレスの天板とグリーンのタイルが無垢板によく合います。

来客の多いお施主さんのために、大きなバックカウンターも設置して

数人で料理を楽しめる気持ちのいい空間になりました。

バックカウンターにも同じ形で色違いのタイルが入っているのがポイントです。

 

トイレ内の手洗い場。

カウンターの高さピッタリに配置された明りとりの窓から柔らかい光が入り、タイルの陰影が綺麗です。

 

二階の洗面カウンターも造作で作りました。

オフホワイトのタイルと耐水処理された無垢板が良く似合います。

大工さん手作りの収納も使い勝手が良さそうです。

 

桜の季節が待ち遠しい素敵な家になりました。

そして4月になり、ついに桜の季節。

お花見にお呼ばれして、やっと満開の桜とご対面することができました。

 

グレーの外壁と桜の薄いピンク色が良く合います。

 

居心地の良い場所が桜の木の廻りに散りばめられています。

ウッドデッキや桟橋で思い思いに集って、いい雰囲気。

 

夜になると桜もライトアップ。

デッキに設けられたカウンターがお店のテラス席のようです。

 

二階のベランダからは庭と桜の木を一望できます。

遠くの里山と川が借景になって素敵な景色。

ついつい外に出たくなるベランダです。

 

構想から1年、沢山の人に支えられて完成しました。

遊び心も沢山、人懐っこく、懐の深いお家になりました。

これから地域の人に末永く愛されますように。

 

 

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施主の本音

気軽に集える木の家は【ふわふわのおうち】と命名され、地域コミュニティのための〔つどいの広場〕(0~3歳の子どもと保護者の交流)として地域の方に開放されています。お施主さんにお話しを伺いました。

 

み「ふわふわのおうちを建てることになったいきさつを教えてください」

主「地域に役立つことがしたくて、このような建物をつくりました。きっかけは会社の駐車場を地域に開放し、遊具で遊んでもらうイベント『ふわふわデー』を行うなか、みなさんが楽しんでいる様子を見て、子育てやご縁をつなげる場所をつくりたいと思ったんです。行政が認可する子育て支援事業〔つどいの広場〕を知り、土地探しをしたのですが、なかなか見つからず、コミニティーセンターでやりはじめたらこの土地が見つかりました。着工は昨年の7月。コロナで事業が大変なときの大英断でしたね」

 

 

み「民家とは22年前に建てた別荘からのお付き合いだと聞いていますが」

主「その後、社屋の建築でもお世話になりました。当初は軽量鉄骨のプレハブでいいと考えていましたが、長い時間を過ごす場所だからこそ、気持ちのいい空間でありたいと方針を改め、ログハウスのような快適なオフィス&製作室にしてもらいました。打ち合わせに来られたお客さんの滞在時間が長くなり、仕事の話で盛り上がるなど、好結果をもたらしています。今回も素敵な木の家になり、民家さんにお願いしてよかったです。」

 

 

み「1階部分は大きなワンフロアのプレイルームになっていて、陽当りがよく風通しがよくて子どもが元気に遊べそうですね」

主「子育てに悩むママたちには自然の温もりを感じる空間でほっとしてもらえることが大事だと思います。親の幸せな気分が子どもに伝わりますからね」

み「たくさんの方に利用していただきたいですね」

主「今後は、預かり保育事業に加えて、養護施設出身の若者支援として気軽に相談できる”実家”的な存在になりたいと思っています」

 

K邸

所在地:大阪府茨木市

主要構造:木造2階建て

設計・施工:(株)建築士事務所民家

竣工:2021年2月

工期:約1年

敷地面積:594.45㎡

建坪:約66坪

延べ床面積:289.66㎡

建物本体工事費用:約6,150万円(税別)

本体工事以外に要した費用: