思い出を引き継ぐ平屋
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計画中
民家設計のお家にお住まいのお友達から紹介を受け、最初はリフォームのご相談を受けました。
思い入れのある建物をできれば建て替えたくないけれど、
建物検査を行うと、基礎の方から老朽化が進み、構造から考えても建て替えは避けられません。
それならば、出来るだけ今の家の雰囲気を引き継いだ計画にしましょうと、新築でお話が進みました。
広い敷地の中に素敵なお庭があり、四季に応じて変化のある植栽計画がされていました。
窓からその景色を眺めるのを楽しみにされているお施主さんの意向を汲んで
出来るだけ現在の家の形を踏襲し、玄関の位置や窓の位置を同じにして、変わらない景色と馴染みよい動線を残しています。
焼杉や杉板を外壁にも多用して、暖かな家の雰囲気を残しています。
最終的に、このプランをよりブラッシュアップした2案目で新築を行うことになりました。
解体に際して出てきた松梁。
新築でも活用できないかとご相談を受けました。古材活用大好きです、是非使いましょう。
手作業で進む解体現場から、計5本の松梁を丁寧に取り外し、弊社の加工場へ持ち帰ります。
5本それぞれの癖や見た目を吟味して、構造として使用する3本を決定します。
別の場所で加工されている構造材と、ぐにゃりと曲がった松梁がぴったりと合うように
一本一本丁寧に手加工を行います。職人技っ!
構造材の準備も万全。
ついに敷地で棟上げが始まります。
建設中
気候も丁度良く晴天の中棟上げが始まりました。
現場には木の香りがいっぱいに広がります。杉の木目と色味が綺麗ですね。
敷地の松と遠くに見える山並みがとても美しいです。
焼杉と杉板、切妻の高さを抑えた家のボリュームが敷地に良く馴染んで据わっていました。
気になっていた松梁も綺麗に収まりました。
この松梁は構造としても効いていますが、古材のため、もし松梁の耐力が想定以下だった場合のために、
その上にある母屋だけでも荷重を負担できるようになっています。
このあたりは、一軒づつ構造計算をおこなっているから出来る計画ですね。
棟上げが終わると、内部と外部に分かれて作業が進みます。
床には杉板が貼られ、壁には気密シートが綺麗に張られています。
ちなみにただのビニルシートではありません。
ウルト社製の可変調湿気密シートを使用しています。気温に応じて透湿したりしなかったりと、
気温湿度の変化の大きい日本の四季に応じて、適切な空気環境を保ってくれる優れものです。高気密高断熱の家作りには欠かせません。
外壁にも同じくウルト社製の防水シートを使用しています。一般的な防水シートに比べて耐久性が全然違うんです。
外壁の下地の部分ですが見えないところにこそ、手を抜いちゃいけませんよね。
内部では、仕上げ作業が進んでいますが、大工さんが何やら面白そうな動きをしています。
格子状に木を組んで。。。
天井に取り付けました。そうです格天井です。
通常は直接天井で格天井を組んで行きますが、気密性能を確保するために、あえて格子を組んでから取り付けるパネル式で施工を進めました。
意匠性、施工性、気密性能と、大工・設計・施工と知恵を出し合って編み出した自信作です。
廊下の天井にも凹凸の印象的なヒノキ板が仕上がっていました。
思い出を引き継ぐ平屋、もうすぐ完成です。
完成
焼杉と杉板の美しい平屋のお家が完成しました。
プライバシーを尊重し間取り等が分らないよう部分を重視してご紹介させて頂きます。
外壁には焼杉を使用しました。
深い軒は雨から焼杉を守りながら、深く落ち着いた雰囲気を与えてくれます。
四季の変化が美しいお庭の植栽ととても良い関係。
リビングの天井には松梁が添えられています。
気密を確保できるよう平天井として、丸太に水平の天井がまっすぐ入っています。なかなか難しい加工技術です。
表面の模様(ちょうな仕上げ)は、元々のデザインで、昔の大工さんの手加工の温かみを感じます。
仕上げはあえてオイルで磨くだけにして、古材の風合いを残しました。
今回、個人的にもお気に入りなのが建具。
個性的な型板ガラスは、前の建物の建具から丁寧に取り外して保存していたものを再利用しました。
実は建具のサイズや大きさも、この再利用するガラスに合わせて作られています。
丁寧にガラスを洗い、古さを感じさせない仕上がりました。
今はもう作られていないデザインの型板ガラス。真鍮の取手と合わせて甦りました。
そして今回一番の見どころと言えば和室です。
コンパクトながら久々の本格的な和室の設えとあって、大工さんも力が入っています。
天井は格天井、柔らかい色味の畳は省農薬畳で仕上げています。
天井の格天井は圧巻の仕上がりです。
桟を細目にして、丸面を取っているのがポイント。
現代風な解釈と伝統的な設えがマッチしてとても気持ちの良い空間になりました。
廊下にはヒノキ板で小幅板風の仕上げを行っています。
廊下の奥行を強調しながら、音の反響も抑えられるのでピッタリの仕上げ材です。
上品な趣に仕上がりますね。
キッチンの天井はシンプルな杉板で仕上げました。
温かみのある落ち着いた空間です。
思い入れのあった家の想い出や景色を引き継いで、
ただ全てを新しく綺麗にするだけが正解じゃないと学んだ家づくりでした。
引き継いだ松梁や型板ガラスと、また彩として加わった格天井や木の風合いが
経年変化をもって馴染んで行くのが楽しみです。
施主の本音
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所在地:
主要構造:木造平屋建て
設計・施工:建築士事務所 民家
竣工:令和6年 1月
工期:3か月
敷地面積:
建坪:
延べ床面積:
建物本体工事費用:
本体工事以外に要した費用: