WORKS事例紹介

土間のある家

計画中

猫と暮らす平屋の住まいの見学会でのこと。

実は近くに家があり、リフォームを考えていまして。と相談を受けました。

なんでも、猫が3匹いらっしゃるそうで。これは楽しみ。

リフォームの場合は、まず建物を調査に伺います。

戦後すぐに建てられた二軒長屋の平屋建て。

現在は左側だけで生活されているのですが、子供も大きくなり

二軒長屋の界壁を抜いて一つの家にできないか?とのご相談でした。

長い年月の中で、生活に合わせて沢山の増改築の跡があり、

特に家の裏側は度重なる増改築によって雨仕舞、構造共に不安定な印象でした。

しかしながら、大切に住み継がれて来た工夫が随所に残り、その想いは大切にしたいところ。

内部は二軒長屋の教科書通りの間取り。

二間続きの和室に沿って通り土間が玄関からまっすぐ伸びて、その奥に井戸や水場が配置されています。

過去のリフォームで土間に床を作り、水場にはトイレやキッチンを増築しています。

床下の状態もしっかりチェック。

当時にしては珍しく部分的にコンクリートの基礎が入っていました。

地面の湿気が多く、ここは優先的に改善が必要なポイントです。

小屋裏収納では立派な松梁と小窓を発見。

このあたりをヒントに楽しいプランを考えたいですね。

調査の上、現況図を元にプランを考えます。

長細い間取りの中まで光が入るように、構造と後々のメンテナンスを考慮して、、、、。

あざとく付加されたものを取っ払って、元々作られた当時の家の良さを引き出す事を意識して。。。

完成しました、土間のある家。

予算を抑えるため、最近リフォームしたキッチン周りはそのままに。

増築されていた右側の家の水回りを解体し、本来のお庭を眺められる空間を復活させました。

さらにメインの玄関の前には土間も復活させました。

前面道路が近い敷地のため、道路に溢れていた自転車を土間の中まで入れられるようにし、

リビングが土間と一体に使えるようにする事で、四季を通じて様々な生活の体験が生まれます。

リビングには大きな吹き抜けと松梁がアクセントに、

元々屋根裏にあったハイサイドの窓を使ってリビングに風と光を落とします。

瓦屋根は一度リフォームで吹き替え済みのためそのまま再利用し、

目前の前面道路とは、木のルーバーで目線を遮り建物に表情を与えます。

右側の玄関があった場所には、猫さんのお部屋を配置。思い切ってショーウィンドウのように外に大きく窓を開きました。

猫さんが外を眺めるとき、通行人もまた猫を眺めます。

家の窓だって、外から中を眺めるための窓があってもいいんじゃないでしょうか?

模型も作って打合せを進めます。

せっかくなのでお風呂も入れ替えちゃいましょう。

予算を考慮しながら打合せを進め、耐震についてもしっかりと構造設計を行いました。

外からは想像もできないような、表情豊かな空間がたくさん詰まったプランになりました。

早速工事を始めましょう!!

 

 

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建設中

今回は施工エリアを半分に分け、片方を完成させた後、引っ越しを行い、残り半分を完成させます。

よってちょっと工期は長め、約4か月ですべての工程の完成を目指します。

着工日を迎え、早速解体工事が始まりました。

大量の土埃と共に天井が落とされて、小屋裏の空間が現れました。

ぐにゃりと曲がった松梁がダイナミックです。

昔ながらの碍子(ガイシ)で配線された電線に時代を感じますね。

改めてこんなに大きな空間が屋根裏にあったんだと驚きます。

資材不足を補うための様々な工夫が見られ、昔の家づくりの技術をしばし見物。

解体を進めるとこんなものまで!

昔おくどさんの上に取付られていた煙抜き、今で言う換気フードでしょうか。

中が煤で真っ黒になっていて、中を覗き込むと吸い込まれそう。。(ちょっと怖い)

ばさっと落ちてきて閉じ込められそうなので、早々に解体しました。

解体が終わると、まずは湿気をブロックするための防湿土間打ちが始まります。

土間屋さんもついつい上を眺めて、小屋組みに感嘆の声を上げます。

コンクリートが割れないようにメッシュ筋を敷き詰めて、ポンプ車で圧送します。

これで地面から湿気も上がってこないので、シロアリやカビからも家が守られて安心です。

土間打ちが終われば、構造補強の作業が始まります。

解体してさらに詳しく判明した情報を考慮して、当初の構造補強計画を修正、吟味します。

金物の強度や配置、耐力壁の作り方を大工さんと再度確認。

数字で必要な補強はもちろん、大工さんの知識と経験からより安心安全な構造補強方法を考えます。

ほとんどの場合、紙面上で考えただけの構造補強は役に立ちません。

経年変化した古材はひねって曲がって、それをどう補強するか。大工さんの経験と知識は偉大です。

古材と新しい梁材のコントラストが綺麗ですね。

本当は全部天井を抜いて見せてしまい所ですが、寝室にはちょっと落ち着かないので、

完成の際には見えなくなってしまいます。

リビングで化粧梁となる梁が少し壁から顔を見せていました。磨くときっと綺麗な色艶が出るはず。

構造補強が始まれば、大工さんの造作工事が始まります。

コンクリートの土間の上に束を並べて、大引き、根太を敷いて床を作っていきます。

明るさの邪魔をしていた増築エリアを解体したおかげで、光が家の中まで入ってくるようになりました。

長屋独特の深い陰影が綺麗です。

「腕が鳴るぜ。」と背中が語っております。

リフォームでは、柱がまっすぐ立っていることは稀です。

壁も床も、垂直、平行になるように下地を調整して行きます。時間がかかる作業も丁寧に。

見えないところが一番大事。

外部では左官仕上げの木下地が完成していました。

このままの仕上げでも綺麗ですね。とお施主さん。確かに。

でも左官で仕上げるともっと素敵になりますよー。

内部の板天井も仕上がりました。

一期工事の大工工事もそろそろ終盤です。

 

 

 

 

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完成

玄関を潜ると、ドーンと長い通り土間が広がります。

土間の突き当りには、キッチンへ続くドアがあり、長屋特有のキッチンへの導線の長さも解消。

自転車を押して最短で買ってきた食材を冷蔵庫へ運ぶことができます。

土間とつながる6枚の障子は,夏は開け放し開放的に。冬と来客時は締め切って。

用途に応じて自由に使い分けることができます。

自転車やベビーカー置き場にもなり、来客時の応接にもなる。

時にリビングの延長として、様々な用途に対応する豊かな空間です。

土間空間のざっくりとした下駄箱兼玄関収納棚も大容量で便利!

扉を付けずに、ラフに使うのが今っぽい設え。

土間とリビングの天井を障子いっぱいの高さに作ることで、土間からフラットにつながる空間を意識しました。

リビングには入るとこの景色。

天井高さを抑えた土間空間から、一気に吹き抜けのあるリビングへの爽快感は格別です。

調査で発見した立派な松梁もリビングの主役に抜擢です。

建具のラインを揃えて、シンプルですっきりとした印象に仕上げました。

障子や土間がありながら和風になり過ぎないようにしたのもポイントです。

元々小屋裏収納にあった小窓を使って、リビングに奥まで自然光を届けます。

長屋でも照明無しでも十分明るいリビングになりました。

起床時間の違うご夫婦のために、2方向から入れる寝室を用意しました。

一方は廊下から、一方はリビングから。

寝室にはデスクスペースを用意しています。

西面にあたるため、西日が直接部屋を刺さないように、地窓と高窓を配置。

空気が上下で流れる効率の良い換気が可能です。

同じく西日を遮る障子を開けると、広縁スペースが。

お洗濯ものをちょっと干しても、障子があるのでいつでも隠せて便利です。

増築エリアをすべて解体撤去することで、寝室に光が明るく入るようになりました。

障子や建具の高さを合わせてスッキリした印象に。

壁の傾きや癖のある既存の躯体を大工さんが綺麗に収めてくれました。

収納と高さを揃えた板天井が気持ちがいいです。

柔らかな光の陰影が綺麗です。

そして、この家ならではの設えが猫専用のお部屋。

前面道路に対して大きく四角い窓が取り付けられています。

夜はキャットタワーのオレンジがショーウィンドウのように映えます。

建物の真ん中、四角い窓がデザインのアクセントになりました。

通行人が猫を眺めるとき、猫もまた外を眺めます。

幸せを呼ぶ招き猫になりますように。

 

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施主の本音

土間のある家

所在地:兵庫県尼崎市

主要構造:木造平屋建て

設計・施工:建築士事務所 民家

竣工:

工期:4か月

敷地面積:

建坪:35坪

延べ床面積:

建物本体工事費用:約1,500万円(税別)

本体工事以外に要した費用:約200万円(税別)