WORKS事例紹介

猫と暮らす平屋の住まい。

計画中

始まりはリフォームのご相談からでした。

古くなった自宅と、同じ敷地内に建つアパートを改修したいとご相談を受け早速調査に。

思いのほか建物の老朽化が進んでいること、敷地奥に建っているアパートは接道が無く、今後解体が困難で再建築が不可になること。

その他予算と施工範囲、今後の土地の利用を考えると、一度全て解体して新築する方が良いとの判断となりました。

早速ボリューム模型で土地の大きさと周辺環境を整理します。

ご要望をまとめると以下の通り、

・里帰りに来るお孫さんを迎え入れるための自然素材を使った家づくり

・来客時に猫さんを避難させる部屋が欲しい

・水廻りはこだわって広めに作りたい

・建具はすべて引き戸、吹き抜けと二階に物干しサンルームが欲しい。

敷地は南北に長く、比較的高い建物に囲まれています。

大きな敷地の北面を駐車場として利用し、将来接道を持って分筆できるよう大きく土地を残して

プライベートなお庭を南面に残した建物の配置が良さそう。

まずは必要とされる床面積と予算を優先して二階建ての提案から。

敷地の南側に完全に寄せ過ぎず、南面のお庭を確保しながら、お隣の家とも配置とバランスを合わせています。

一番風通しと日照のある東南にサンルームを設け、吹き抜けに光を落とします。

図面を元にお打合せを進めると、配置もバランスもOK。

ただ吹き抜けもサンルームもちょっと贅沢なので中止してしっかり床面積が欲しい。との事。

ではしっかり作り込んで行きましょう。

完成しました1stプラン。

一階に和室とリビング、水廻りをまとめ、二階は丸ごと寝室のコンパクトプラン。

予算も大幅に抑えたシンプルなプランです。

デザインも予算もクリアしましたが、ここで気になるのが平屋だったらどうなるのか?

やっぱり年齢を考えると平屋は捨てきれないし、平屋なら予算をオーバーしてもなんとか。との事。

わかります。わかります。

ただ、収納や確保したい床面積を考えるとかなり大きな平屋になってしまう事、

敷地条件から、平屋にすると明るさの確保が難しい事。

そんな事を考慮して、できました2ndプラン。

段違いの屋根を設けたロフト付きの平屋です。

北面から見ると、落ち着いた和風の平屋ですが、南面には屋根に段差を設け、光と風を取り込みます。

段違いの部分は大きなロフトスペースとして収納を確保しながら、猫さん達の部屋にもなっています。

各部屋に小さな小窓を介して、光と風が行き渡るプラン。

イイ感じ、これで行きましょうか!と打合せも終盤、

ご主人から「瓦屋根で棟が欲しい。」とのご要望。

実はご主人は建築士の資格も有していて、構造や工法にも明確なこだわりが。

予算も大切ですが、ご主人の願いに奥様もここは譲歩のご様子。

ではなんとか予算に影響が無いよう調整して、瓦屋根の棟付きのプランに修正してみましょう。

完成しました3rdプラン。

シンプルな平屋ながら、正面玄関には丸みのある外壁と木製建具でアクセントを。

リビングには勾配天井と梁を現した高い天井で、平屋ながら縦に広がる空間が魅力的です。

ロフトの小窓から猫さんがのぞいてくれることを期待。

約一年をかけてじっくりとプランを進めました。

自身の生活に本当に必要なものか何かをじっくり検討し、こだわりも捨てない。

遊び心も残る素敵なプランになりました。

棟上げは4月を予定。

春が楽しみですね。

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建設中

元々あった建物の解体作業を終えて着工を待つばかりの敷地。

3方を建物に囲われた細長い敷地が特徴的です。

まずは地鎮祭。

土地の神様へご挨拶と共に工事の安全を願います。

足元のロープは、地縄と言って実際の建物の大きさや配置を確認するものです。

雨の予報が嘘のように、天気も快晴で幸先の良いスタート。

と、安堵しているのもつかの間。

地鎮祭を終え、早速基礎工事に取り掛かると、現場から電話が。

「土にガラが混ざってて捨てられへん。」

現場に急行すると、建物を解体した時に出たガラが敷地の土に交じっている状態。

土だけの場合は、「残土」として、他の現場の埋め立てに使う等の利用ができるため、安く引き取ってくれるのですが、

ガラの交じった土は「産業廃棄物」になるので、処分費が一気に上がります。

ちなみに解体はお施主さんの知人に直接発注されたのですが、聞けばこちらの提示見積りの四割引きだったそうで、、、。

価格には理由があると言うことでしょうか。

ちなみに残土は、解体屋さんに引き取って頂くことで解決。

予定より残土撤去のために深く地が荒れたため、表層の地盤改良を行い基礎工事へと進みます。

完成した基礎、養生期間もしっかり確保して、丈夫に仕上がりました。

ちょっとだけ角の部分を面取りしてあるのがミソです。後々玄関の意匠に関わる大事な部分。

基礎工事が終わり一気に現場は慌ただしくなります。

構造材が次々に搬入され、大型クレーンを使い一気に組み上げます。

辺りには木の香りが広がります。

周囲をマンションに囲まれているので、見学のギャラリーも多く注目の的でした。

棟上げが終われば、上棟式です。

今回は足元が悪いので、お施主さんに代わって民家スタッフでお酒とお塩とお米を四方に撒いて清めます。

棟が上がれば、雨が入らないように屋根工事を進めます。

200年以上の歴史ある瓦屋さんが丁寧に進めてくれます。(創業は1700年代後期だそう。)

今回は、和風過ぎず、重た過ぎずのデザインを考慮して、フラット瓦を選定しました。

屋根が終わると足場が外れて、外壁の左官作業がスタート。

今回は、玄関周りのアクセントに少し丸みのある壁を作っています。

一度は左官屋さんに断られながらも、なんとかモノづくりの想いに共感頂いて、難しい作業を進めてもらいました。

玄関周りの木製建具と合わせて趣のある表情を作ってくれるはず。

家の中でもどんどん作業が進みます。

断熱材が敷きこまれ、造作工事を大工さんが順序良く進めます。

ちなみに上に見えている太鼓梁は大工さんの手加工により完成したもの。

機械ではできない、丸太の仕口の加工を丁寧に行い、薄皮を残して表面をオイルで磨いて行きます。

梁の出てくる高さを目線に近いちょっと低めの位置に設定しているため、

ログハウスのような無骨な空間ににならないように、あえて梁せいを抑えて主張しすぎないようにしました。

洗面室では、タイル工事が進んでします。

民家では定番となったニッタイ「グロスウォール40番」

涼やかな色味と自然なムラが人気です。

リビングには造作家具が設置されました。

あとは外構工事を残すのみ。

完成に続きます。

 

 

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完成

構想から約一年。【猫と暮らす平屋の住まい】完成しました。

玄関の丸みのある外壁も綺麗に仕上がり、ほっこりする家になりました。ちょっとジブリみたい。

さすが、猫と暮らす家だけあって、竣工の日にはご近所の猫さんもお祝いに駆けつけてくれました。

玄関先で誰よりくつろぐ猫様。竣工おめでとうございます。

玄関の丸みのある壁は、木製建具の窓の部分にも使われていて、左官屋さんの技が光ります。

着想は、箱木千年家の土間入口。

お孫さんや近所の方も、誰でも優しく受け入れるようなほっこりする趣を目指しました。

玄関を入ると、目の前には大きな玄関収納があり、右の扉を開けるとロフトの入り口。

左を開けると玄関収納になっています。

コートや雑多なものが片付くので便利。

玄関横には、杉板のベンチと、ナラの方立てとセンの木の飾り棚。

ナラの方立ては、玄関の引手と材種と寸法を揃え、手摺にもなる優れもの。

すりガラスから入る柔らかい光と塗り壁の素材感とが良い雰囲気。

もう一方の玄関横には下駄箱収納と木製建具の小窓を配置。

廊下に光と風が通ります。

写真右手は水回り、左手のドアは納戸に繋がります。

玄関から天井高さを下げて、奥につながるリビングへの期待感を高めます。

リビングは一気に天井高さが上がり、太鼓梁と勾配天井のある気持ちの良い空間に。

12畳ほどのコンパクトなリビングながら、狭さを感じさせません。

キッチンは奥様こだわりのクリスタルカウンター。

奥のタイルもキッチンの天板に合わせてガラス製の大判タイルを選定しています。

キッチンバックカウンターも、ごみ箱や家電がぴったり収まるように無駄なく設計されています。

身長にあわせて全体がちょっと低めに設定されているのもポイント。

キッチンからは、リビングと一体に使える6畳の和室へと目線が抜けます。

テレビが見やすいようにあえての三枚引きの障子にしてあります。

和室の壁には土佐和紙を使用。

和紙の柔らかい光が和室の雰囲気ととてもよく合います。

地窓から路地の涼しい風が入ってくるのでお昼寝にぴったり。

和室の天井も丸太梁と勾配天井で新築とは思えないほど重厚な趣。

各部屋にはロフトに通じる窓が用意されていて、猫さんがロフトから覗けるように作られています。

洗面台も造作で作りました。

ナラの天板と淡いブルーのタイルがよく合います。

作り付けの収納と、材種を合わせた既製品の鏡もいい感じ。

右手には、板の腰壁の貼られたトイレを配置しました。

あえてトイレのドアは無し、夫婦2人ならこれで十分ですね。

(ちなみに後からやっぱり欲しくなった時のために、ドアの溝だけ突いてあります。)

ロフトは8畳ほどの広さがあり、半分はご主人の書斎に、半分は猫さんのお部屋になります。

明るくどの部屋にも窓で通じているので、家族の存在を感じながらも、書斎でゆっくり自分の時間も確保できます。

夫婦でも丁度良い距離感は大切ですよね。

和室を望むロフトの窓から。

太鼓梁がとても綺麗です。

コンパクトながら、細部を丁寧に作り込むことで唯一無二の平屋になりました。

ロフト付きの25坪の平屋。丁度いいサイズなぁと改めて感じました。

お引渡し後、お孫さんが里帰りに新築の家に初めて訪問されました。

無垢の杉板の上を元気にハイハイして縦横無尽に動き回ってくれていました。

ロフトに上がって遊んだり、梁にハンモック吊ってみたり。

想いでの沢山残る、愛されるおじいちゃんおばあちゃんの家になってくれたらと思います。

 

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施主の本音

広い敷地にこじんまりとした木のお家。しかも街中なのに平屋。憧れの詰まった住まいという表現がぴったりのI邸を訪問しました。

主「元の家は昭和3年築。前栽が設けられた昔ながらの平屋で、台風などで壁が傷み、年々冬の寒さが身に沁みていました」

み「昭和3年というと築93年経ったお住まいだったんですね」

主「昨年あたりから我慢の限界を感じていたのと、たくさんの保護猫の数が2匹にまで減ったので、改装中の仮住まいがしやすくなったと思いました」

み「民家に決められたきっかけは何ですか」

主「最初はリフォーム業者にあたりましたが、家全体が傷んでいるため新築ぐらいお金がかかるといわれ、断念しました。新築するにしても夫はハウスメーカーのプレハブの家は気に入らないといい、ふとコープ自然派で紹介されていた木のお家を思い出し、民家さんに相談したんです」

み「リフォームから建て替えに変更されたんですね」

主「初めは2階建てのプランでしたが、予算の関係でやめにし、その代わりに屋根裏部屋を作ることにしました。以前の家にも屋根裏部屋があったので使い勝手の良さを知っていたんです」

み「近所に仮住まいをされていて、よく現場を訪ねておられたと伺いましたが」

主「棟梁は一見職人気質の寡黙な雰囲気でしたが、お話すると人当たりのよい方で、棚付けの追加注文など気さくに応じてもらいました。設計についてはすべて民家さんにお任せでしたが、さすがプロですね。機能的でおしゃれな仕上がりにしてくださいました。夫がこだわったのは玄関の床部分をモルタル仕上げに、屋根を和瓦にしたことですね」

(完成見学会の様子です)

和室以外の床はすべてムクのスギ板、壁と天井はエコクロスを使用。

主「ダイニングと居間は南向きなのと地窓も設えたので、とても明るく、風通しもよくなりました。以前は昼間でも灯りが必要だったんです」

み「暮らしてみていかがですか」

主「引越して約1か月ですが、最初に感じたのは家事動線がスムーズなので、効率よく動けて体が楽ということ。クローゼットに洋服掛けをたっぷり作ってもらったので、洗濯して乾いた服をハンガーのまま収容でき、たたむ・しまう作業がなくなりました。終の棲家としてコンパクトで気持ちのいい住まいに満足しているのですが、今一番の悩みは処分しきれない荷物をいかに減らすかということ。これが解決したら、仲良しやご近所の方に木のお家のよさを存分に見てもらいたいと思っているんですよ」

 

猫と暮らす平屋の住まい。

所在地:尼崎市

主要構造:構造在来工法 平屋建て

設計・施工:(株)建築士事務所 民家

竣工:(株)建築士事務所 民家

工期:3ヵ月

敷地面積:

建坪:67㎡ (20坪)

延べ床面積:67㎡ (20坪)

建物本体工事費用:2500万円

本体工事以外に要した費用:300万円