門屋をもてなしの場へ改修
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施主の本音
JR奈良線「上狛(かみこま)」駅を下車、旧奈良街道沿いを歩くと、ほのかにお茶の香りが漂ってきます。ここ山城地区は南山城一帯で栽培されたお茶の加工・流通業を営む茶問屋が集まる街。江戸時代以降に建てられた伝統的な木造家屋が点在するなど、歴史的景観の色濃い街並みが印象的です。
今回のお施主さんは老舗茶問屋の宇治香園(うじこうえん)さん。古民家の門屋を改修し、お客さまを迎え入れるもてなしの場に生まれ変わりました。
「この問屋は商談室として使っていましたが、今後どのような使い道があるか、長く考えあぐねていました。昨年、改修を決意し、民家さんを含め3社に見積りを依頼。老舗の品格をそこなわず、地域の皆さんに受け入れていただける空間とはどのようなものか。私たちの思いに一番近かったのが民家さんの提案。天井をはがして、太い梁を見せる意匠設計も気に入りましたね」と小嶋さん。
台風で傷んだ外壁を修復し、内装は一新。ヒノキの床と腰板、しっくいの壁、屋根裏には呼吸する塗壁材“そよかぜ”を塗装するなど、明るく気持ちのいい空間が完成しました。
「ここに入ると、空気がやわらかく感じられ、落ち着きますね。自然の中にいるようで、溶け込める気持ちになれます」と奥さま。「自然素材を使いたいというのは、譲れない条件でした。それにしても民家さんはいい仕事をされますね。工事の初日に気づいたんですが、整理整頓が行き届いており、仕事の段取りがいい。どんな仕事でも整理整頓は大切ですが、なかなかできないことですよ」(小嶋さん)
門屋はもともと宇治茶の精選加工場だったところで、そこに続く蔵(築90年)はその保管庫だったそうです。
「かつては木津川から淀川を経て、神戸へとつながる舟運を利用し、日本茶を海外に輸出するなど、このあたりはたいへんな賑わいでした。山城は東神戸と呼ばれていたんですよ。現在も35軒の茶問屋があります。近年、日本茶が再びクローズアップされ、私たちも急須で淹れた本来の味わいを知っていただきたいと、さまざまな活動をおこなっています。また、この地区は“山城茶問屋ストリート”と呼ばれ、まちおこしの機運も高まっています。そういった意味でも、この門屋が人と人がつながる空間になればいいですね」
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