DIARY現場日記

香港で日本の名作建築に触れる。

2025.06.10カテゴリー: 中津の建築探訪記

五年前に訪れて以来、何度も旅行を計画しながら、時事問題に翻弄されて結局行けなかった愛しの香港。

今回はマイルが溜まったり、野暮用も重なって、今しかない!と、仕事終わりにそのまま空港へ向かう強行スケジュールで行って来ました。

今回の目的の一つがヘルツォーク&ド・ムーロン設計の美術館「M+」

北京リンピックの鳥の巣や日本ではプラダ青山が有名な建築家です。

ヘルツォーク&ド・ムーロンの設計は、突拍子もないデザインや発想に見えて、意図を聞けば妙に納得してしまうところ。

北京オリンピックの映像を見て、カッコイイ!と飛行機に飛び乗った学生時代から、今も変わらず憧れの建築家です。

今回訪れたM+では、アートナイトが開催されていて、夜中の9時にも関わらずとんでもない盛り上がり。

列柱で支えられた大空間に爆音とお酒を持った人たちで溢れかえっていました。アジアのパワーを感じる。

地下に見えているコンクリートの塊が元々あった地下トンネル。

それを掘り起こして建築の一部とし、そのグリットを引用した吹き抜けと、海を正面とする構造のグリットとのズレをあえて印象付ける。

地下トンネルの素材を引用したマッシブなコンクリートで空間を立ち上げながらも、部分的に木目を型枠とした意匠を配して、と読み解けばキリがない。

一階には無かったコンクリートのトラスが、2階のアトリウムにだけ表れて、見えない上部のタワーを印象付けているあたり、

ため息が出るほど絶妙な構造のグラデーションが効いています。

爆音の会場の真上で開催されていたピカソ展(ピカソの作品と影響された現代アートを並列して展示し読み解く絶妙な会場構成!)や

収蔵されているアジアの現代アートのコレクション(日本人作家の名作がほとんど海外に出てしまっている現実)に圧倒されながらも

今回、一番楽しみにしていたのが、M+が誇る建築のコレクション。

ホワイトキューブの中に突然現れる日本のお店。

こちら、バラの浮かんだ透明な椅子で有名な、倉俣史朗さんデザインのお寿司屋さん「きよ友」を新橋からまるごと移築したもの。やることがおっかない。

有名な照明から、大理石のカウンターに挿入されたガラスのボックス。

家具の延長にあるような柔らかな合板の使い方がとても綺麗。

菊竹清訓さん設計のエキスポタワーの一部。

記憶の中では、エキスポシティができるまで、まだ部分的に現地に残っていたのを覚えていたので、香港で再開するとは思わなかった。

そして極めつけがこちら。

黒川紀章設計の中銀カプセルタワー

バラバラになったカプセルの一部が香港に。しかも内装がオリジナル。

SONYのテープレコーダーにテレビ、丸く面取られた内装はまるで宇宙船。

その他にも、世界中の有名建築家のドローイングや家具がずらり。

特に近現代の日本の建築に関する資料が丁寧に展示されて、とても誇り高い気分になると同時に、

なんでこれが本来あるべき日本に無いんだ、、、と文化の温度差にとてもがっかりしてしまう。

屋外には、香港でも今は無くなってしまったネオン看板が展示されていました。

文化をどのように残すか、特に残すだけでも莫大なお金とエネルギーが必要な建築については、

”国力”みたいな力技がないとなかなか難しいのかもしれません。

いつか自費で香港の名作建築を日本に持ってきてやろうかな。

それまで素敵な香港の文化が残りますように。