施主の本音

昔のまちなみが色濃く残っている柏原市。点在する古民家を眺めながら歩いていると、今回のお施主さん、S邸に到着した。木をアクセントにしたモダンな佇まいが目を引く。
「前の家は築45年で雨漏りとシロアリが発生したので、建て替えを考えていました。終の棲家をどうするか、夫婦で話し合っていたんですよ」とSさん。
「ご近所の自然食品店”根っこや”さんはむくの木をふんだんに使った感じのいい店なので、『どこで建てたんですか』と聞き、民家さんのことを教わりました。パンフレットやHPを拝見し、見学会にも参加。大工さんと話をし、こういう人に家を建ててほしいと思いました」。

しかしご主人は「まあ、いいけど、近所の工務店でいいんじゃない」という反応で、奥さまとの温度差は歴然。
「私も気持ちが揺らいでしまい、住宅展示場に足を運んだりもしました。でも結局、民家さんの良さがよくわかり、お願いすることにしたんです。大きな決断なので、四柱推命の先生の見立てで解体の時期をずらしました。他の悩みで再度みてもらったら、さらに入居をずらしたほうがいいと。工事が始まっているのに止めるわけにはいきません。このときばかりは自分たちの思いを信じ、できる限りのゲン担ぎをし、良くない卦を払拭しようと決意したんですよ」
Sさんの住まいに対する要望は風と光がふんだんに入る、コンパクトな住まい。

「希望したのはそれぐらいです。あとは民家さんに提案していただきました。キッチンの棚は私がお願いし、設計士さんに対応してもらいました。天井ファンは掃除が大変と思い、予定にはなかったんですが、工事中に棟梁から空気が対流するのでいいよとアドバイスいただき、急遽、追加を。設計図や模型では実感が湧かなかったんですが、家が完成したときはとても感動しましたね。自分たちの家なのか信じられず、朝、夢から覚めるのではと思ったほど(笑)。主人は『ええ家やなあ』が口癖になり、娘は掃除好きになりました。偶然の出会いから家づくりに真摯な人たちに巡り会い、こんな素敵な家が建てられたことに感謝しています。その気持ちを忘れず、日々を大切に暮らしていきたいですね」