WORKS事例紹介

重量鉄骨倉庫のリノベーション

計画中

ご依頼を頂きましたYさんは、以前民家でご自宅兼店舗を新築させて頂いたOBさんの息子さんです。
現在お店の倉庫として使っている建物のうち1/3は倉庫に、2/3をYさんの自宅に改修したいとのご依頼を頂きました。
倉庫を自宅にリノベーションとか聞いてただけで楽しそう!早速現調へ向かいました


お~~倉庫だ~!見事に倉庫だ~~!


中はこんな感じ。
おおきな鉄筋のバッテン筋交いが印象的。


ふと見上げると屋根から木漏れ日が。聞けばどなたか歩いてぶち抜いたとか。
なぜ屋根をという疑問はともかく、事故物件にならなくて本当に良かった。


さっそく図面を起こしてゾーニングを。
鉄骨とコンクリートブロックからなる築50年以上の倉庫です。
当時の構造計算書も無いので出来れば構造は触りたくない。
ということで、極力既存の開口部を生かす方向へ。

Yさんのご要望は,倉庫部分にコピー機を置きたい。
倉庫スペースにお米(ご実家がお米屋さんなので)を10袋くらい積める高さが欲しい。それぐらい。

あと心配なのは耐震性(ごもっとも!)
それと断熱性(倉庫ですから今の時点では皆無!)

住居スペースへのご要望はまだ漠然としていたので、ならばこちらの提案にお施主さんを引き込んじゃえ!と
初回提出プランがこちらです。
↓ ↓ ↓


部屋ごとに高さを変えてみたり、コンクリートブロックを部屋内に見せてみたりとジャンクなテイストへ。
楽しくプランしちゃいました。しすぎちゃったかもしれません。

で、肝心のYさんの感想は、「う~ん、住居部分を通らずに外から直接倉庫に行きたいな~」とのこと。
なるほど確かに。しかしそうなると大きな筋交いを取らなきゃいけない。
取っちゃって良いものか正直分からん。
取っちゃって良いですかと試しにYさんに聞くも、良いですよなんて答えが来るはずもなく・・。


ふと現況図を見て思い付く。あ、むしろ取ってしまって新たに右側に筋交い付けた方が
バランス良くなるじゃん!


鉄骨屋さんに相談をしてみたら、どうやらいけるっぽい。
じゃあその方向でサクッとプランしちゃいましょう!


(サクッと苦しみぬいたプランの数々・・・)


ちょっとポーチを奥まらせて雨よけにして、寝室のプライバシーを守りつつ倉庫と住戸の干渉部分にしてみたり。


いろいろ詳細詰めまして、打ち合わせを重ねまして、みっちりプランをまとめました。


そして自信満々の満身創痍でCGも立ち上げ、


模型も作りました!!


視覚的説得力が功を奏したのか、熱い気持ちが通じたのか、Y様にも大変気に入っていただけました!

ということで、施工へと続きます!

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建設中


解体初日
ついに始まりました!猛暑の中の解体初日。


道路に面した植物の生長率がすごい。


今はガランとした倉庫だけど、ここがお部屋に大変身!!の予定。


今はもう動かないお米用の巨大冷蔵庫。ちょうどこの部分が倉庫エリアになります。


解体後の様子。大胆に壁が無くなって、物凄く明るくなりました。


このままだと構造が不安定なので、すぐに補強を。赤い鉄骨は新たに新設された補強材。これで安心。


ここからは大工さんの出番。どんどん壁が立ち上がっていきます。


屋根が貼られました。透明な部分は下から見上げると天窓になる仕組み。


床下の配管。キノコみたいなのは床を支える束になります。


高発泡ウレタン断熱材のアイシネンでもっこもこに。


天井も、もっこもこ。


大きな建具が入る鴨居を大工さんが現場加工しています。


ボードが貼られました。


外壁もどんどん進んでます。


チラ見している木の部分が早くも良い感じ!


足場が外れました!毎度この瞬間がたまりません!
ぐいーんと伸びる深い庇、黒いガルバリウムの外壁。対比して温かみのある木の壁。渋カッコいい!!


Yさんとじっくりじっくり話し合って決めた住設が設置されました。
キッチンはまだ箱の中。早く見たい!


洗面化粧台
おしゃれなタイルはLIXILの美釉彩(びゆうさい)
男性の住まいっぽく渋カッコいいですね


トイレ
床は炭化コルク材。耐水性、耐久性があり踏み心地もグー


ゆったり1坪サイズのユニットバス


外構工事も着々と


コンクリートを打設するための下準備。バラス(細かい石)を敷き、メッシュの鉄筋をいれています。


木の型枠部分にはアクセントで玉砂利を入れます。


まだ乾く前のコンクリート。足跡残したくなる衝動。


玄関部分のタイル
モルタル調で、良い感じ。


クロスが貼られ、真っ白な壁出現!ゴールはもうすぐそこ!


一方 大工さんは会社の倉庫で何やら箱を組んでいます。


大工さん手作りの玄関収納が完成!Yさまへのプレゼントです。

玄関収納を設置すれば、いよいよ完成です!!

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完成

工事期間約3か月。ついに完成しました!!


この倉庫が、


こうなりました!!!


外壁はガルバリウム鋼板。タニタ(体脂肪計じゃない方)のZIGシリーズ、色はブラックです。
表面が山形で、マットな感じが渋カッコいい。


リビング゙の様子。小上がりのある左側が寝室で、ちょっと腰かけてテレビが見れるようになっています。


障子を閉めたらこんな感じ。
奥の天井上のスペースは普段使わないもの置き場に。
梯子は隣の倉庫にあるので、いつでも持ってこれます。


玄関の様子。床は初めて使ったモルタルタイル。ちょっと白華してるのが良い感じ。


玄関の反対側。プレゼントの大工さん手作り玄関収納はここに設置されました。
喜んで頂けてヨカッタ。押しつけにならなくてヨカッタ。向こうに見えるのは倉庫部分の扉です。


洗面、トイレ、浴室の様子。ガラス張りの浴室がオシャレ!
屋根を透明な波板にした部分の真下がここです。上からの自然採光で昼間は照明いらずです。


寝室の様子。木製のガラリ窓は程よく目隠しに。


寝室の窓のアップ。窓から見える美しい草原の景色が絵画のように納まる工夫を必死でしたのに。
夏が過ぎたら全て刈られていたなんて。


Yさんこだわりのコレクション用飾り棚。間接照明を仕込みました。
一体どんなコレクションを飾るのかしら、うふふ。


キッチンの様子。天井は床と同じく杉板に、節が無いものを選んでます。


キッチンを横から。杉板のパース効果で、さらに奥行感が出ています。


こちらは、倉庫エリア。
お米や食品の保管場所になります。なので仕上げもボードだけ。アイシネンもそのまんま。
猛暑の中、暑さを遮りどれほど現場での避難場所になってくれたことか・・。
アイシネンの凄さを身をもって感じました。


ご厚意で見学会を開催させて頂きました!
展示している繊細で美しい陶器の数々はOBさんの息子さんで陶芸家の方の作品
作品展と見学会のコラボです!!


窓の格子から漏れる光と繊細な陶器の造形が芸術的・・・。
しかしイチゴジュースそこに置いたの誰やねん。


草原の景色を窓一面に見せるため、枠を見せない工夫をしたと熱く語る設計者。
草は刈られてますけども。


時は流れて半年後、もう一度見学会をさせて頂きました。
家具が入って親しみやすくなったからでしょうか、今回の見学会は座って話をされる方が多かったです。


見学会を通じて私たちの家造りに対する想いや工夫の数々をお伝えし、
参加された方からはご自身の家の悩みや希望などもお伺いしたり、
いろいろ今後の参考になる貴重な経験になりました。

無事にお引渡しが終わり、最後に想うこと。。。

自分がここに住みたいわ!!!

ここまでご覧いただきありがとうございます。

良かったらお施主さんの本音も是非ご覧ください。

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施主の本音


完成した後、お施主さんにお話を伺いました。

み「今回のリフォームのきっかけを聞かせてください。」

主「うちは祖父の代から続く米屋で、この倉庫は50年ぐらい前に建ったものと聞いています。
2018年の台風で雨漏りがひどくなり、屋根の修繕について家族で話し合いをしたところ、どうせ直すなら、僕の住む居宅スペースも作ろうということになり、民家さんに相談しました。
お店は16年前に民家さんに建てていただいた建物で、同じような木の家がいいなと
思ったからです。

当初は新築で2階建てを考えていましたが、建築基準法により建て替えができないのと予算も考慮し、平屋のままで軽量鉄骨造の構造を活かしたリノベーションを行うことになりました」

み「どのような倉庫兼居宅を作りたいとお考えで、実際それは叶えられましたか?」

主「建物に対する希望は、底冷えと夏の酷暑対策ですね。
倉庫で使っていたときは、外と同じくらい冬は寒く、夏は暑かったんです。断熱材を入れるだけで、居宅スペースは快適になり、倉庫のほうも作業が楽になりました。


また、風通しや採光にも工夫をこらしてもらいました。
筋交いを残したことで窓の数や場所に制限が生じたものの、窓そのものを大きくしたり、和紙のようなプリーツスクリーン(ハニカムブラインド)を取り付けることで明るさを活かしながら目隠しを可能にしました。1LDKの間取りですが、天井が高く、空間が広々しています。


リビングと寝室に造り付けの棚、キッチンの上部には収納スペースを提案していただいたことで、余分な家具を買わずにすみました。全体の質感が統一しているだけでなく、おしゃれに仕上がっているので、さすがだなと思います。どんなインテリアにしようか、
楽しみながら悩んでいます(笑)」

み「建築中、散歩する人たちが正面玄関の大きなポーチを見て、なんのお店ができるの?とよく声をかけてきたそうですね。」

主「『店ができるの?』と何度も聞かれるので、大工さんが『たこ焼き屋ができるよ』と冗談を言っていたそうです(笑)。

ポーチが大きいのも筋交いの影響ですが、結果的に台車で米を運びやすいのと、倉庫と住まいの区切りとしてもちょうどいい空間になりました。

民家さんのおかげで元倉庫とは思えない、おしゃれですっきりした住まいができ、満足しています。
なるべくモノを置かず、気持ちよく暮らしていきたいです」

Y邸

所在地:大阪府柏原市

主要構造:重量鉄骨造平屋

設計・施工:(株)建築士事務所民家

竣工:2020年11月

工期:約3ケ月

敷地面積:150.88㎡

建坪:約28坪

延べ床面積:91.2㎡(内 28.8㎡ 倉庫)

建物本体工事費用:約2,200万円(税別)※解体費用は除く

本体工事以外に要した費用: